中学生の頃に血液の難病を発症し、高校生になる頃には寛解して安心していた中川さん。ところが27歳のある日、再発して入院を余儀なくされ、ITPを併発していることが判明します。再発の不安や強い疲労感に悩まされながらも、介護の仕事に情熱的に取り組み、趣味の車の運転も続けたいという中川さんに、病気と向き合いながら過ごす日常について伺いました。
注:これまで特発性血小板減少性紫斑病と呼ばれていたITPですが、病気の本体が明らかになるとともに海外では2010年ごろから免疫性血小板減少症と呼ばれるようになり、日本でも2025年4月に免疫性血小板減少症に病名変更となりました。
中川さんは中学校に入ってすぐ、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を発症。治療を開始し、高校生の頃には寛解していました。
ところが介護士として仕事を始めていた27歳の時、ちょっとした怪我が原因で炎症を起こし、AIHAが再発して入院を余儀なくされます。その翌年から症状が再発しては入院を繰り返すようになりました。そして詳しい検査の結果、新たな難病、ITPの併発が判明したのです。
診断には「あ、またか」というくらいの
気持ちでも、両親に心配をかけるのが
申し訳なくて
「ITPだと診断を受けた時は、正直、なんとも思いませんでした。中学生で難病に罹っていたので、『あ、またか』というくらいの気持ちで。でも両親に伝えたら、泣いていました。それを見て、また心配ごとを増やしてしまったなと。自分自身がつらいというよりは、家族や周りの人に心配をかけて本当に申し訳ないという思いのほうが強かったですね」
ITPを併発しても、自覚症状のほとんどない中川さんは、普段は病気をさほど気にかけることもなく過ごしていたといいます。病気のリスクを改めて実感したのは、定期検査からそのまま入院することになった時でした。通常20万以上はある血小板が1万あまりに減少しており、すぐ入院が必要だと言われたのです。
「そう言われても私自身は元気そのもので、そんなに悪いと思わなかったんです。入院中に車を病院に置きっぱなしにするわけにはいかないので一度帰りたいと医師に相談しました。
すると医師から『脳の血管からは普段から少しずつ出血しています。運転中に気を失って事故を起こす可能性もあるので帰せません』と強く言われたんです。その時に初めて、あ、これは怖いことなんだなと認識しました」
それ以来、中川さんは「常に爆弾を抱えているようなもの」という意識を持つようになりました。人混みを歩いていれば人とぶつかることもあり、治療で免疫が低下しているため感染症も心配です。介護の仕事では人と接触して怪我をするリスクもあります。
「仕事も忙しいので、日常生活では病気のことをつい忘れてしまうんですよね。でも、お風呂に入った時、あざがいくつかできているのに気づくと、そうだ病気があったんだ、気をつけなきゃなと思いだすんです」
一般的にITPの症状としては、あざや口内炎ができやすいことが挙げられます。しかし中川さんには普段そのような症状はほとんどありません。中川さんにとって唯一の自覚症状は、重い倦怠感です。しっかり休んだ翌朝でも、何か月も働き詰めだったようなだるさに襲われます。仕事中に体が動かなくなることはしばしば。介護の訪問現場を回る合間、少しでも時間があれば公園で座り、体を休めました。
あまりの倦怠感に、
真冬の寒空の下でも寝られちゃうんです
「飲み物を片手に、寝るわけでもなく本当にぼーっとして。それでもお昼を過ぎる頃には仮眠しないと午後まったく動けなくなってしまいます。真冬の寒空の下、公園のベンチで20分ほど目をつぶって、それでも寝られちゃうんです。」
難病とともに生きる患者さんにとって、治療のゴールを治癒や寛解に定めるのは難しいことです。中川さんにとって、治療のゴールイメージは「安定していること」だといいます。
「SNSなどで寛解した方を見ることはありますし、私自身もAIHAは寛解に至った経験もあります。ただITPで自分が寛解するかどうかはわかりません。ですから、自分の中では安定していることが一つのゴールです。もし薬を減らすことができたら最高に運がいい、そんな捉え方です」
旅行や人気スポットへのお出かけなどには制約のある日常ですが、中川さんが変わらず好きで続けているのが、車を運転することです。
ゆくゆくはラリーレースに出てみたい
やっぱり諦めたくないんです
「調子がいい時には少し遠出もできるようになりました。車で山を走りに行ったりもします。ゆくゆくはラリーレースにも出てみたいと思っています。ヘルメットや防具をつけていてもけっこう衝撃が強くて危険なんですよ。でも、将来問題がクリアできれば出てみたいです。
打撲は私にとってすごく怖いことですが、走り抜けた時の爽快感は怖さを越えるものがあります。やっぱり諦めたくない。できればずっと乗っていたいですね」
紹介した発症、診断の経緯および症状は個人の経験に基づいたものであり、全ての方が同様の経過をたどるわけではありません
(参考)「難病情報センターホームページ(2025年8月現在)
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